DeepLove−彼の弟−




「……いやだよ…なおっ……置いていかないでぇ…」



ペタンと床に座り込んで泣き叫ぶあたし。



「……いやぁぁあぁ…」



あたしの行動が葬儀の邪魔になっているのは分かってる。


あきらかに泣き叫んでいるあたしはうるさい。





だけど、誰も止めなかった。




『静かにして』なんて言わなかった。

ただ黙ってあたしを見つめているだけだった。



たぶん、誰にもあたしが止められないと思ったんだと思う。




悲痛の声をあげる恋人の想いは、葬儀中の人々にも痛いほど伝わった。



だから誰も声をかけられなかった。




死んでしまった恋人に嘆き叫ぶ姿を見て誰もが、責めることはできないと思った。





< 40 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop