蜜蜂
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「…杏花、こっち貸して。」


俺は杏花がもってる三つの荷物から一つを取った。


「え、千明。」


「中身参考書とかでしょ?重そうだから持つよ。それにさ、それたすと両手塞がるじゃん。」

俺は、杏花が今さっき買った袋を指さす。


「でも、そしたら千明が大変じゃない。」


「平気。どうせ俺のカバンの中空っぽだし。これで他のやつと同じ重さ。」


そう言って、手提げ袋を肩にひょいと乗せ、歩きだす。


「…本当に大丈夫?重くて手痛くなったら言ってね?」


「言わないよ、かっこ悪いじゃん。」


苦笑いで返した。
遠慮されたことに、また少し距離を感じた。
それが彼女の日常なのはわかっているし、べつに全面的に頼ってほしいわけではないんだけど。



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