蜜蜂
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アンティーク調の小物で飾られた店。甘い香りがお茶会へと誘う。
その店の前に、学制服を着た二人は立っていた。


「"piano dolce"…?」


「そう、常連さんは"dolce"って呼ぶけど。」


「なんか楽器屋さんみたいな名前ね。」


「まぁね、店長が音楽好きでグランドピアノあるし。
dolceはデザートって意味もあるけど。」


「へぇ…よく知ってるのね。」


「知ってなきゃ殺されるもん。」


「?」


彼女は不思議そうに首を傾げてみせた。


「まぁ気にしないで。行こ。」


「でも…本当にいいの?」


杏花は、まだ俺の邪魔にならないか心配してるらしい。
ならないし。反対に、好きな子に見られながらとかやる気出るし。
格好悪いから言わないけど。


「大丈夫だって、ほら。」


渋る彼女の手をとり、引っ張って店の扉を開けた。


「ただいまー。」


「へ…?」




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