蜜蜂
.



少し放心した彼女。
ちなみに俺は杏花の手を握ったまま束沙に抱きつかれているため、二人の顔の距離もかなり近い。
俺は束沙を引き剥がして、繋いだ手に少し力を入れて、彼女の顔を覗き込む。


「えっと、えっと…」


「杏花…大丈夫?」


「だ、大丈夫、ちょっとびっくりしただけ。
えっと、待ってね?聞きたいことがまとまらない…。」


「わかったから。とにかく…深呼吸でもしとく?」


こんな杏花見たのは初めてで、思いついたことを言ってみた。
てことで、一緒に深呼吸してみたり。


「…落ち着いた?」


「うん…千明、聞いていい?」


「うん。」


「ここは、千明のおうち?」


「うん、俺ん家。」


そう答えると、彼女は一つ安堵のため息。


「…あと、えっと、そちらの方は…」


杏花の視線の先には、やたらニコニコしたやつ。


「あぁ、これ俺の姉。」


「長女の束沙でーす!」


俺の紹介に、束沙は右手を上げながら楽しそうに名乗った。



.
< 113 / 203 >

この作品をシェア

pagetop