蜜蜂
2.

17.想うほど

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■想うほど






大切だと思うほど、身動きができなくなるのを感じた。








「千明ー、昼。」


「んー…」


頭の上から呼ぶ声に反応した。
未だ閉じようとする瞼を、なんとかしてゆっくり持ち上げる。


「昼、飯。起・き・ろー」


ヒカリが、俺の前の席に向かい合うように座りながら言った。


「あーもう昼か…屋上…」


俺は少しずつ頭を働かせながら小さくぼやいた。
杏花に会える。
そう思ってコンビニ袋を持って席を立とうとした。


「千明、残念ながら今日の昼はここ。」


ヒカリは俺の腕を掴んでそう言った。


「…は?」


ここって教室じゃん。


「何で?てか亜也は?」


辺りを見回しながらヒカリに聞く。
仲間同士で集まってお昼をしているやつら、その中に亜也の姿はない。


「亜也なら澤木ちゃんと屋上。今日は男立ち入り禁止だってさ。」


ヒカリはつまらなさそうだった。


「ふぅん…」


俺はそれだけ言って、席についた。
決まったことに、とやかく言うつもりはないけど。
納得したくなかった。
ただ、杏花に会える時間が30分減っただけ。
それが、かなり貴重な時間に思えた。



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