蜜蜂
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「っ」


出かかった言葉を呑み込んだ。
確かに勝手に判断されるのは嫌いだ。
でも、今まで拒んできたものを理由にするほど、彼女に会いたくなかった。



「………怖いんだよ、あいつに拒絶されるのが」



代わりに出た言葉に、自分自身納得した。

そうか、彼女に拒絶されるのが怖いんだ。
俺が傷つくのが、怖いんだ。


「…千明」


今まで黙って見ていたヒカリが口を開いた。
名前を呼ばれてそちらを向くと、



「グダグダ言ってないで早く行ってこい!」



そう言われ、教室の外に放られた。


「ちょ、ヒカリ何」


尻餅をついた俺は頭を上げ、驚きながらヒカリを見ると、


「女々しいんだよ。
男なら腹くくって行け、うっとうしい。」


無表情のヒカリは黒い言葉を吐いた。

いつもヘラヘラしてるから、こいつの無表情は怒っている時より怖く見える。

俺は右の口角を少し上げながら、小さく「はい」としか答えられなかった。




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