蜜蜂
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「俺は澤木ちゃんの護衛。
千明がさ、まだ絡まれるかもしんないからって。」


そう言うと、彼女が少しだけはにかんだ気がした。


「…心配症……私は強いから大丈夫なのに」


どこか嬉しそうに見える彼女に、一瞬だけだが、世界を奪われた気がした。


「……強くなんてないよ。女なんだし」


「何それ、偏見?」


「事実だよ」


喧嘩ごしになりかけた彼女に、手を見せ降参しながら言った。

確かに強いのかもしれない。とくに澤木ちゃんなら。
それでも女は守られるべきだと思う。そのことは俺も千明と同意見だ。


「まぁ、強い弱いの話じゃなくて、頼ることも大切ってことだよ」


俺の言葉に、彼女はヘコンだような表情を見せた。
表情豊かな彼女は一日中見ていても飽きないかもと、千明に怒られそうな考えが浮かんだ。


「…それよりさ、聞いていい?」


聞くと、短く「なぁに?」と返された。
これは了承の答えだと受け取る。




「澤木ちゃんさ、千明のこと好きっしょ?」



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