蜜蜂
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一つため息をつきながら、ベッドから起き上がって隅に座った。


「…最近来なかったのは、女追いかけてたからだよ。」


「…ふーん、青春だねぇ。
で、フラレたから逃げてきた、と。」


「フラレてないから。」


銀蔵の言葉に反論しながら、彼女の口から言われてない、と、少し自分に言い聞かせた。


「…ま、逃げてるのは合ってるけど。
女の相手するの辛いんだよね」


「追いかけてる女がいるのに女の相手?
そんなに飢えてるのか?」


「ちがうって。
追いかけてる女守るために相手してんだよ」


少し投げやりに言うと、


「…要するに、好きな女が嫌がらせ受けてるから自分身代わりってやつ?」


「そうそれ」


理解力のある保健医相手だと、説明が省けて楽。
銀蔵は椅子を引き、こちらにクルリと回って足を組んだ。


「オレさ、お前のそういう自己犠牲精神わかんねぇんだけど。」




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