蜜蜂
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「ただ、すきなんだ―……」



「…千明、……離して」





偶然通りかかった資料室の前。
"きょうか"と名前を呼ぶ千明と、そう呼ばれる澤木さんがいた。
澤木さんは知ってる。
真面目そうな人なのに綺麗な金髪で、一時期騒がれてたから。



『ただ、すきなんだ―……』



さっきの千明の告白が、頭の中で反芻する。
どうして相手はあたしじゃないの?
どうして、後から出てきたあんたが言われてるの?
あたしのほうが千明のそばにいた時間は長いのに。
どうして、その言葉を貰えるのはあんたなの?

黒い想いが、心の中でグルグル渦巻いた。

ただの嫉妬。
わかっていたのに止められなかった。
なんとかして、もう一度視界に入りたかった。






ごめんね千明、あたし我が侭で。
ごめんね、全然気づけなくて。

千明の今の気持ち、一番あたしが知ってたのに。





To be continue...


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