蜜蜂
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「要するに、杏花なんでしょ?」


『…私の説明全部省けばね。』


「だって俺バカだからさ、難しいこと理解できないの。ごめんね、杏花。」


少し悲しそうに言うから、ちょっと焦って言い訳をした。
だって、どれだけ言葉を並べられても、杏花は杏花だ。


「…じゃあさ、杏花の名前知ってんのって俺だけ?」


ふと聞いてみる。
彼女は『そうかもね』と、少し考えてから言った。


「うわーなんか嬉しいかも…。何?弁明する気ないの?」


『ないよ?別に澤木って呼ばれるの好きだし、知らない人に急に名前で呼ばれたら引いちゃう。』


「…なるほど。」


彼女は基本、あまり他人に興味をもたないようだ。
これは、そんな彼女だからありえる答えだろう。
たいていの人間は他人に嫌われないように必死になるが、きっと彼女はしない。
ある意味不思議だ。


『ん、言いたいのはこれだけ。ごめんね、昼休み潰しちゃって。』


「や、いいよ。俺も聞けてよかったし。
…ねぇ杏花、今度どっか行かない?日曜とか。」



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