蜜蜂
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「…え?」


あ、思ってたこと口にした?
まぁいいか。


「二番も三番もいらないの。俺さ、あいつに夢中なわけ。
なかなか手強くてさ、他の女の相手してる余裕ないの。」


俺的に、結構酷いことを言ったと思う。
いつもはオブラートに包んだ感じで、遠慮してたから。
でも、そんなこと気にしていられない。他の女より杏花が大事。


「何よ、せっかく言ってあげてるのに!千明のバカッ!!」


女は機嫌を悪そうにそう怒鳴り、そっぽを向いて歩いて行った。
その後ろ姿を見つめて手を打つ。


「…あぁ、恵里佳か。」


やっと相手の名前を思い出した。


「………はぁ。」


小さくため息を吐きながら目を閉じて思考を一時停止。
数十秒後、目を開けて息を吐いた。


「よし。」


杏花の元に戻ろうと振り向いた時、


「話終わった?」


「うわっ!」


真後ろに彼女がいた。



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