蜜蜂
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「時川、そんなに俺の授業受けたくないのか?ん?」


頭上から降ってくる声。
山岸がご立腹の様子で俺たちの前に立っていた。
俺は寝たふり。


「そんなことないよ。山岸ちゃんの授業面白いもん。
ただね、そのことちぃと話そうとしてたらちぃ寝ちゃってさ、起こそうと必死だったの。ごめんね?」


教師相手にタメ口を使う亜也。
少しは上下関係を学ぶべきだと思う。
だが教師も、


「そうか。じゃあ東条起こしておけよ。」


それだけ言って黒板の前に戻っていく。
それもそれでどうかと思うが、亜也相手に説教を始めようとする教師を俺は未だ見たことがない。


「えへへ、流石あたしー!」


そう小声で嬉しそうに言いながら、顔を横に向けた俺にピースと笑顔を向けてくる。


「…うん、さすが。」


同意した。
亜也の憎めない性格とか世渡り上手なところは、見習いたいと思う。




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