蜜蜂
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「あーかったるい。」
横でヒカリが、体をボキボキ鳴らしながら伸びをする。
「どうせ寝てたんだろ。」
「ちげーよ。俺この授業、席が一番前だから寝られねーの。
いいよな後ろは」
「後ろじゃなくて真ん中だよ。」
「前じゃなきゃ他は一緒なんだよ。」
文句を言うヒカリに亜也がつっこむ。
こいつらこそ本当に進展するのだろうか。
俺の心配より、自分の心配をするべきだと思う。
二人を放っておいて歩き出そうと前を向いた。
「!」
視界に揺れる、蜂蜜色。
「…杏花。」
無意識に呟いた、彼女の名前。
電話に向かってしか言わないから、自分の言った言葉がやけに耳についた。
彼女にも俺の声が聞こえたのだろうか。
髪を押さえながらこちらを向く。
この距離では届いていないと思うが、視線がぶつかった。
「…。」
沈黙。
近づきたい、手をのばして彼女に触れたいと思った。
時間が止まったように感じる。
「きょう…」
名前を呼びながら近づこうと足を運ぶ。
いや、運べなかった。
「…ああ。」
彼女は瞳に拒絶の色を浮かべ、そのまま行ってしまったから。
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「あーかったるい。」
横でヒカリが、体をボキボキ鳴らしながら伸びをする。
「どうせ寝てたんだろ。」
「ちげーよ。俺この授業、席が一番前だから寝られねーの。
いいよな後ろは」
「後ろじゃなくて真ん中だよ。」
「前じゃなきゃ他は一緒なんだよ。」
文句を言うヒカリに亜也がつっこむ。
こいつらこそ本当に進展するのだろうか。
俺の心配より、自分の心配をするべきだと思う。
二人を放っておいて歩き出そうと前を向いた。
「!」
視界に揺れる、蜂蜜色。
「…杏花。」
無意識に呟いた、彼女の名前。
電話に向かってしか言わないから、自分の言った言葉がやけに耳についた。
彼女にも俺の声が聞こえたのだろうか。
髪を押さえながらこちらを向く。
この距離では届いていないと思うが、視線がぶつかった。
「…。」
沈黙。
近づきたい、手をのばして彼女に触れたいと思った。
時間が止まったように感じる。
「きょう…」
名前を呼びながら近づこうと足を運ぶ。
いや、運べなかった。
「…ああ。」
彼女は瞳に拒絶の色を浮かべ、そのまま行ってしまったから。
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