蜜蜂
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違う、違うんだ。
杏花のためとか言っといて、それはただの口実で。

ただ、離れてほしくなくて。
もっとそばにいてほしくて。


あいつらに紹介すれば、否応なしに離れられないだろう?



そしたらまた、距離が縮まる。



「…て、ごめん、ちょっと待って。」


彼女に言葉にして断りを入れた。




……なんか俺、考えがおかしくないか?
俺、こんなに独占欲強かったっけ?
ていうか、これは独占というより束縛……?

やばい、やばいって俺。


「千明、大丈夫?」


「うん大丈夫。ごめん…」


額に手をあてて気持ちを落ち着かせる。
邪な気持ちを必死に心の奥へとおいやった。




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