黒アゲハ Ⅲ -運命- 【全完】
「産むのか?」
え…?
純のお父さんからの、思いもしない質問。
ちょっぴり動揺しながらも、あたしははっきり「産みたいです!!」と答えた。
「ほんと?」
「はい」
「よかったわ〜結奈ちゃんがおろしますって答えたら…結奈ちゃんのこと、嫌いになってたわ」
「…え?」
「私ね、純ができる前まで助産師だったのよ。
だから授かる命も失う命もたっくさん見てきた。命について、簡単に考えてる娘は好きになれないわ」
「あたしもある人の命と引き替えに、今生きています。そんなあたしのお腹にいる赤ちゃんを、おろすなんて…あたしにはできません」
純のお母さんはほっとしたように笑うと「いい娘と出会ったわね〜」と純に笑いかけていた。
よかった…
あとは純のお父さんだけだ。