あの日を追って…
「彼女は僕とシャルアムの仲が良い友人だった。だがある日彼女の態度に頭にきた僕は言ったんだ。」
「お前は僕より下の立場なんだ!なのに何故逆らうんだ。お前の父親なんて僕のお父さんにいいつければいつでも首をはねられる…ってね」
「彼女の父親は僕の会社で働いていて優秀といえる社員ではなかった。」
「一度、ミターシャの父親は会社で失敗して職を無くしかけたんだ。その時のミターシャの父は酒に溺れたらしい。ミターシャはそれを知っていた。」
ウィリアムは空をみると少し悲しい顔をした。
「そしてミターシャは逆らわなくなった。」
ウィリアムはまた視線を落とした。
「僕に今まで逆らっていたミターシャは僕の機嫌をとったり、敬語を使うようになった。その時の僕はその快感に浸ってミターシャに酷いことをたくさん言ったんだ。でもミターシャは唇をかみ、反発するのを我慢していたんだ」
「僕は密かにミターシャに反発して欲しいと思っていたのだろうね…」
「…」
アランは黙って聞いている。
「ミターシャと僕の仲は仲良しではなくなった。ミターシャと僕の間にいつの間にか壁ができていたんだ」
「そしてミターシャは僕の前から姿を消した。」
「消した?彼女は何処に…」
アランはウィリアムに尋ねた。
ウィリアムは恐る恐る口を開いた。
「…彼女の行方は未だ分からない。だが彼女の靴が湖から発見されたんだ…おそらく…彼女は…」
死んだ−−−−…
ウィリアムは窓にこつんと頭をぶつけると視線を落とした。