あの日を追って…
屋敷に戻るとアランは外にでた。
風にあたりたかった。
そして木に寄りかかると箱を空にかざした。
「箱を何故僕が…」
その時だった。
「どうしたの、お兄ちゃん」
振り向くと赤いフードを被った子供が立っていた。
顔はよく見えない。
「君は…?」
アランは体を起こした。
「ふふふ…可笑しいの」
そぅ子供は笑った。
「世の中には知らない方がいいことがたくさんあるのに…」
アランは首を傾げた。
「お兄ちゃん、知らないから今を幸せに生きれるとボクは思うの…」
「何を…」
子供はにっこり笑うと
「忘れてしまいたい事だってあったでしょ?」
と言った。
アランは見透かしたかのような気がして気持ち悪かった。
「ボクはね、忠告をしているんだよ。お兄ちゃんはきっと後悔すると思ってね」
「何を言って…」
その時、おでこに手を翳された。
「今回は忠告しにきただけだから…お兄ちゃんは少し休むべきだよ?」
子供はそう言うと
「…ね?」
と聞き返した。
それと同時にアランに異変がおきた。
頭がぼーっとする−…
思考が停止する−…
気が付くとアランの目の前に子供はいなかった。
空は日が暮れかかっていて綺麗な茜色に染まっていた。
アランはさっきまでの出来事を夢かと思ったが、どうやら違うらしい。
木の影には赤いフード付きのマントが落ちていた。
マントは風に乗って何処までも飛んでいった。
まるで子供の所に戻るかのように。