あの日を追って…
「今すぐベネチアさんを解放してください。」
ヴェルディは嘲笑う。
『誰が潔く解放するか…人質にもちょうど良い。』
「アラン…僕が見えるか…」
少年はアランに話かける。
少年は薄く透けている。
「僕は君、君は僕。」
少年はアランの後ろに背中を合わせた。
「今、魔石によって消滅したのは代わりの蜘蛛の体…今の僕は破られた君の記憶…」
「僕の記憶…?」
アランは後ろを見る。
「そぅ…僕は君に今なら帰ることができる…だが僕が戻ると今まで僕がしたことが無くなってしまうんだ。」
「したこと…?」
アランは問い掛ける。
「僕が消したシャルの記憶。」
アランは黙って聞く。
「それが一気に蘇るんだ。おばあ様が死んだことや…旦那様が今病気である事。だから君が僕の代わりに傍にいてほしい…」
「それと…シャルの中の僕も消えてしまうんだ…」
小さな声で呟くと
少年はアランを包んだ。
「僕はあるべき場所へ帰るよ…」
「今までシャルを守ってくれてありがとう…」
「何を言う…それは当たり前だ…」
そう言うと静かに消えていった。
『馬鹿な…何が起こって…』
ヴェルディは急に慌てた。
「おば様…思い出したよ…」
『まさか…お前は…』
『僕はアラン。アラン=ユノ=キャルベリーノ!』