manaloha
ENDLESS SUMMER
夕方、窓のカーテンを閉めていたお母さんが、その手を止めて言いました。
「あら。ふふふ。Kさんが夕涼みしてる」
見ると、お隣のKさんご夫婦が、家のすぐ前の公園のベンチに並んで座っています。
Kさんは2人とも60代。
ご近所でも仲良し夫婦で有名です。
閉めきった窓のこちら側からは何を話しているのか分かりませんが、静かな様子でしあわせそうに見えます。
夕方の空は薄い水色とピンク色が溶け合って、空気までやさしい色に染めていました。
「恋してるんだね」
カイルが言いました。
「そうよ。あのふたりはいつだって恋してるのよ」
お母さんが言いました。
真心ロックを口ずさみながら、きゅうってした。
その横でカイルは何度も窓の外を覗いては、まだ恋してるよ、と言っていました。
恋してる、という表現が合っているのか疑問ですが、かわいくて、なんだかせつなくて、その場のすべてがノスタルジックなスペースでした。
恋してるふたりの邪魔にならないように、空を見ようと外に出ると、夏の終わりの涼しい風が吹いていました。