瞳の中には君が居て



「……………何。」


あたしが振り向くと竜心は俯いていた。
あたしはため息をはいて言った。

「…………用がないならあたし行くから。はなしてくんない。」


あたしはそういってもはなさない竜心を振り払って教室をでた。

あたしは気付けなかった。
竜心の不安に…

何であたしはこのとき気付けなかったの…
竜心は普段すごく優しいのに、あたしに嫌みを言った。
転校生を見に行けと言った。
はなして、と言ったのにはなさなかった。
心って言ったのに続きをはなそうとはしなかった。


そう、すべては逆だったの―…

嫌みを言ったのはあたしの気持ちを確かめたかったから。
転校生を見に行ってほしくなかったから。
はなさなかったのはあたしが遠くに行ってしまうと思ったから。

心の続きを言わなかったんじゃなくて、言えなかった。

行かないで、って
言えなかったんだ―…





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