瞳の中には君が居て
「……なぁ、どっかいこうや。」
「ゆき。」
「じゃー、いくかぁ。」
ぞろぞろと立ち上がるみんな。
「確かマックあるだろ。いこうぜ。」
チャリと鍵をもって路地裏をあとにしていく。
あたしはちょっと寂しそうな海斗の背中をみた。
「……かい……」
「…………心…」
うしろに引っ張られたからだ。
「…………ゆき……」
「…………心…」
間近でみるゆきは本当に穂積ゆきみたいだった。
「………海斗ばっか…見んなや……」
「……え……?」
苦しそうに顔を歪めるゆき。
「………お前は…俺だけ見とけばえぇねん…!」
ちょっと強く言った。
「………ゆ……」
あたしがゆきの名前をよぼうとした…そのとき。
突然ふさがれた唇。
「…………?」
一瞬、触れただけの優しいキスだった。
「……………ゆき………?」
ゆきはふっと微笑んで、あたしを引っ張った。
「……………行くで。」
「ゆきー、先輩ー、なにしてんのー!?」
遠くから海斗がよんだ。
「…………海斗……」
あたしは海斗のところまで走っていった。
「先輩?わざわざ走らなくても…」
「…………海斗……」
あたしはわざとじっと海斗の瞳をみながら言った。
「……せ…先輩……?」
次第に動揺の色が溢れ出す瞳。
「……あたしは…頼りないかもしれないけど…海斗の味方だから……何でも相談してほしい。」
「………せんぱ……」
「………あたし…海斗は…信じれる……だから…海斗もあたしを信じて…」
あたしは海斗を悲しみから救い出すように言った。