瞳の中には君が居て



「…だけど竜心はそれでも好きで…告白したの。ダメもとだったけど…告白は成功した。」


正直、竜心の過去は聞きたくなかった。
前みたいに喧嘩なんてしたくなかったから。
過去なんて聞いたら喧嘩してしまいそうだったから。

「…だけど…そのコは“恋”を知らなかった。」


“恋”をしらないひとなんているの?


「…竜心も…最初は浮かれてたけど次第にそのことに気付いていく。そして焦りはじめた。」

あたしはついに無言になった。
聞きたくない聞きたくない聞きたくない。

「…そのせいで…喧嘩をしてしまった…」

あたしはぎゅっと目をつぶり、未来のはなしを聞いた。

「…そのコは…怒って昔大切に想っていたひとと瓜二つの後輩に会いに行った…そしてその日は、学校に戻ってこなかった…」


………え………………?


あたしの頭のなかは真っ白。
だってそれじゃまるで―

「ねえ、心。」


未来が冷たい目線で問いかけてくる。

「“恋”って何だろう?」

あたしが必死に考え、出した答え。
そしてそれはいとも簡単に切り捨てられた。


「…………信用できて…支えてくれるひと……」
「違うわ。」




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