瞳の中には君が居て



「いらっしゃいませー。」

店員さんの元気な声がとぶなか、あたしたちが真っ先に向かったのは雑誌、漫画コーナー。

どれ?と言うようにあたしをみてくるみんな。

あたしは仕方なく一番前にあった新しい雑誌を取り出した。


「………これ……」
「えっ、この表紙?」
「………はー………うん。」

あたしは大きなため息をこぼしながら答えた。

「めっちゃ笑ってんじゃん!」
「…………?…うん、仕事だから。」

きっぱり言ったあたしを驚くかのようにみんながあたしをみる。

「………しかも、髪黒い……」
「……ああー………うん。」

あたしはちょっとめんどくさくなって答えた。

「………………心の黒髪……」
「はじめてですよっ」
「……………そ?」

あたしはちょっと笑って答えた。

「でもさ、何でこんな笑えんの?」

航輝は雑誌のなかのあたしが笑顔なのが不思議でしょうがないようだ。

「……………仕事だから。」

あたしはさっきと同じ返事をする。

「じゃなくて!そんな仕事モードに切り替えられるモン?」

「…………うん、私情挟んでちゃ、仕事になんないし。…………それに。笑うのが、モデルの仕事。」

「…………もうプロじゃん…」
「………ははっ、全然。」


そういえば。
いま思ったけど。
ゆき全然しゃべってなくない?


ゆきはあたしたちの会話に興味がないのか、他の雑誌をパラパラよんでいた。





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