瞳の中には君が居て



「………………まって!」


怒りながら一年校舎へと歩いていく海斗をあたしは追った。


「………まって…っ…まって、海斗…!」


あたしが言っても海斗はとまらない。

だからあたしはむりやりとまらせるしかなかった。

「……………海斗!」

あたしは海斗の腕を掴んだ。
そして前へとまわりこむ。

あたしよりちょっと大きい背。


「………海斗………?」


あたしが見上げた海斗は…
泣いていた。


「………か…い……と……?」


あたしがぎゅっと手を握ると海斗はあたしを抱きしめた。


「……………海斗……?」

「………………っ……」


声を押し殺して泣く海斗。

あたしは昔おばあちゃんやゆきにやってもらったように一定のリズムで海斗の背中を叩いた。



「…………いで……」
「……………ん…?」

泣き声を殺すように言ったことば。
それは…

「…………先輩まで、そんなこと言わないで……」
「………………!」


はじめてみた、
あなたの弱さでした……




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