瞳の中には君が居て



「…あっ…ごめん……」


どこかほっとしたように桃は笑顔を作って電話に出る。

何でほっとしてんだよ。


「……はい」



電話に出た桃は何かの糸が切れたように、携帯を落とした。


「何して……」


俺が携帯を拾い上げて顔をあげたそのときには、あいつはもう走り出していたんだ。



本当に愛しているやつのもとへ…




電話はまだ繋がっている。
そして俺も走り出す。


『危篤でしたけど、目を覚まされましたよ!すぐ病院にいらしてください!』

『……どこの病院ですか?』

『またまたぁ!西総合病院ですよ』




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