瞳の中には君が居て
あたしが海斗の部屋を出ると近くの公園でブランコをこいでるゆきがいた。
心なしかゆきは悲しそうにみえた――
あたしは黙ってとなりのブランコに乗る。
「………………」
「………………」
キィ、キィ…
寂しく、虚しい音があたしたちを包んだ。
――こうして何時間たったのだろう…
あたりは闇に包まれていた。
小さな街灯がひとつだけぽつんと立っていた。
「…………俺ん家ではなそ」
「……………うん」
ふいにゆきは言った。
あたしにヘルメットを渡し、ゆきの家へ向かう。
小さなアパートの前にバイクを止め、先に歩くゆき。
あたしも黙ってあとをついていった。
「………………」
「………………」
あたしは無言でゆきの家へ入る。