瞳の中には君が居て
「…………コーヒーでえぇか?」
「いらない」
あたしはキッチンへ行こうとするゆきの腕を掴む。
「――……………」
「…………はなしてよ………ゆき。あなたは穂積でしょう?」
あたしがそういうとゆきははじめて綺麗な顔を歪ませた。
「……………そうや」
「……どうして……」
あっさりと認めるゆき。
あたしは苦しくなった。
どうして、突然いなくなったの?
あたし、悲しかったよ…
あのピンキーリングは何…?
「……………泣くな…ごめん、心」
「…………………っ」
ゆきはあたしの髪を撫でた。
触らないで。
裏切り者。
あたしは手を振り払った。
「…………心……俺は……」
心、と呼ぶ震える声。
あたしが顔を上げたと同時にあたしはゆきの腕の中に居た。
「…………ゆ……き……?」
「…………ごめん…ごめんな、心……」
あたしを抱きしめたまま、謝るゆき。
「……………うん、うん…っ…」
「突然、突然居なくなってごめん…ほんまごめん」