瞳の中には君が居て
ねえ、怒っていいんだよ?
お前もひとのこと言えねぇだろって。
叩いてんじゃねぇ、勝手に泣くなよ、めんどくさい、って言っていいんだよ。
こんな勝手なあたしを怒ってよ。
なのに。
なのにあなたは優しくて。
こんな身勝手なあたしを優しく抱きしめてくれました。
「………ごめんな…言わんほうがええやろ思て」
あたしを抱きしめるゆきの腕はとても優しくて…
さらにゆきは言葉を続けた。
「…心配させるつもりはなかったんや。そのほうが心配しんやろ思て…」
何で、どうして。
あなたは怒らないの。
ねえ、何で?
「…いまから海斗んトコいくわ…ごめんな?悪い、今日上がるわ」
「……はいはーい!明日は早番ね!」
「……わかっとる。行こう、心」
ゆきはあたしの手を握って外へ連れ出した。
海斗の家までを歩くあたしたち。
「……………」
「……………」
あたしたちの間に会話はなかった。