瞳の中には君が居て
長い長い沈黙をピンポーンという音がやぶる。
しかし、中からひとが出てくる気配はなかった。
あたしは携帯を取り出し、海斗に電話をかけた。
プルプル…
『もしもし!?』
またワンコールで電話に出る海斗。
「………海斗?」
『先輩、ゆき見つかった!?』
携帯の向こう側からは雑音が聞こえてくる。
町にまで出ているのだろう。
「………海斗、帰ってきて」
『え!?』
「…………見つかったから」
『すぐいく!』
そういって電話は切れた。
「………待ってよっか」
「…………そうやな」
あたしたちは海斗の家の前に座り込み、海斗の帰りを待つ。
「……………ゆきは、さ」
ずっと聞きたかったこと。
「……どうして…居なくなったの…」
「…………え………」
「………お母さんの事件があったあの日…どうして居なくなったの」
あの、目まぐるしい事件。
思い出したくもない。
でも、でもね。
あのときのプレゼントの髪留め、袋も開けずにとってあるんだよ。