瞳の中には君が居て



その事件と同時に、ゆきは姿を消した。


「………それは…言うたやろ?親父の…」

ゆきはちょっと微笑みながら答える。

「……違うよね?」

違う。
お父さんの都合なんて嘘。
あたしはそう確信していた。

「……………………」
「………もし…もし、本当にお父さんの都合ならメールも電話もできる。手紙だって書ける。なのにゆきはそれをしなかった。それどころか携帯まで変えて、連絡を自ら絶った」


そう…
ゆきは居なくなった。
自ら、居なくなったの。


どうしてか…
何かがあったから。
あたしたちと断ち切らなきゃ、いけない何かが。

なのに名前を変えて、あたしの前に再び現れた。
………何故?


「………また、嘘をつくの?」
「………………」


ゆきは黙って俯く。


「………ねえ」
「………守らなきゃ…」
「…………え?」
「……守らなきゃいけないもの…守りたいものが…あるんや」
「………………」
「……居なくなった理由は、それだけや」



あたしをみて、真っ直ぐ言ったゆき。
ゆきの瞳には迷いも、偽りもなかった。


だからあたしは


「………そう」



黙って頷くことしか出来なかった。




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