瞳の中には君が居て



穂積ゆきはあたしを家まで送ると、「じゃあな」と言って去っていった。

ガララララ…

「………………」
「おかえりなさい。心ちゃん。」
「………ただいま。」

あたしが玄関の戸をあけると、笑顔で迎えてくれるおばあちゃん。

「ご飯食べてきたの?」
「…ううん…」
「じゃ、あっためて食べようね。」
「…え…っ…」

にこっと笑っておばあちゃんはキッチンにはいっていった。
そんなおばあちゃんをあたしは急いで追う。

「おばあちゃん…っ…」
「え…?」
「いいよ…っ…悪いし…おばあちゃんお風呂入ったんでしょ?」


あたしはおばあちゃんの腕を掴んだ。

「え…っ…そうよ?」
「…わざわざ作ったら…汚れちゃうじゃん……」


だんだん小さくなっていく声。
そんなあたしを見て、きょとんとするおばあちゃん。
そして嬉しそうにクスクスと笑った。

「…ありがとう…でも、温めるだけだから。ありがとうね…」

おばあちゃんは笑顔で言うと、その日の夕食を温めてくれた。




< 40 / 193 >

この作品をシェア

pagetop