瞳の中には君が居て
そう、あの日は雨だった。
あの事件のときのように…
雷も鳴っていた…
「……心…?」
あたしは雷が大嫌いなので手で耳を塞いでいた。
「……心?」
心配そうに聞いてくるゆき。
「……あたし…雷…だめなの…」
「…………え。」
雷のことを言うと、ゆきがちょっと笑ったようにみえた。
「…ねー…いまちょっとバカにしなかった…?」
あたしが机に顔をくっつけ、ゆきをみながら言うとゆきはあわてて笑う口元を隠して、
「…全然してないよ。」
と言った。
「……口元笑ってるし…」
「…笑ってない…笑ってない。」
ゆきはあたしと目が合わないように、目線を窓の外に向けながら言う。
「…………ぶぅ~…ん…?」
あたしはぶーたれてゆきがみている外の景色をみた。
すると、校門あたりから真っ赤なカサをゆらゆら揺らしながら校舎へ向かってくるひとがいた。
「………………?」
あたしは不思議に思った。
こんな大遅刻するなら、こなければいい。
しかも、女子高生が真っ赤なビニールガサって…
不気味な。
雨がぽたりぽたりとおちる度、血が落ちているみたいだった。
「……何かあのひと…ゆらゆら揺れて危ない…」
「…………うん…何か…まるで……」
そこであたしの言葉はおわり、悠長な考えは吹き飛んだ。
一瞬目があったそのひとは。
あたしがいま言おうとした人物。
あたしと目が合った瞬間、不気味に笑って見たこともないような早さで校舎のなかに入っていった。