瞳の中には君が居て



幸い腕はかすり傷のようで…
血がぽたりぽたりと流れ出ていた。


「………………!」
「………あはは…っ…心…」

あたしが黙っているとお母さんは気が狂ったように笑いだした。
そしてあたしに果物ナイフを投げ、言った。

「……………っ…」
「…心…殺らなきゃ…殺られるわよ!」

そういって振りかぶるお母さん。
あたしはまた避ける。




…ねえお母さん…
あなたに殺らなきゃ殺られるって言われても…

あたしはあなたを殺すなんて…
できなかった

あなたを殺すくらいなら…
あたしは殺されるよ




お母さん…
あなたはあたしにとって
こわくて、恐怖の存在。
だけど―…



それ以上に…





大切な大切な







この世でたった一人の―…










お母さんなんだよ―…








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