瞳の中には君が居て
雨は止むどころか激しさを増していた。
『……はあ…?』
『……だからこそ…アタシを殺ってほしかった…』
ザー…
『……アンタ何言ってんの…』
『アタシが生きている限り…心は自由にはなれないわ…』
『じゃ、死ねば?』
そう即答した俺に母親はすこし眉を歪める。
『……心…心……』
『……………………』
『………自由になりなさい…』
『…………………』
そう言った母親は小さな袋を俺に手渡した。
『……コレ…目が覚めたら…心に渡しといて…』
『…………自分で渡して…俺は死ぬべきだと思うけど…心はそれじゃ…喜ばないから…悲しむよ…アンタがいなくなったら…だから俺もアンタには生きてもらわなきゃ困る。』
『…………………』
母親は俺の言葉を無視してフェンスを登りはじめた。
『……な…に…してんの…!』
俺はあわてて心からはなれてフェンスに駆け寄った。
『…………心って名前…』
『え?』
『………心って名前……あのこにピッタリでしょう…?』
『…当たり前…だからそれ…本人に言ってあげて…』
『………ふふ…っ』
母親はポケットからヒモのようなものを取り出すと自分のからだに巻き付けた。