瞳の中には君が居て
『……まじやめろって!』
そしてフェンスにもヒモをくくりつけた。
『……もう…会うこともないわ…』
『………………!』
母親は…静かに涙を流した。
『―…心!』
その言葉を最後に母親は視界から消えた。
『――…………!』
俺があわてて下をみるとバンジージャンプ式になっているようで母親は下につくと素早く自分のからだにくくりつけてあったヒモをほどいて裏門に向かって走りだした。
『……何だ…よかっ…』
よかった、と言おうとしたところで俺はあることに気付く。
果物ナイフが―…
ない―…
俺はとっさにもうみえなくなりそうな母親をみた。
『……………!』
その左手には。
しっかりと果物ナイフが握られていた。