「あれもこれも大掃除。」
とりあえずストーブをしまうことにして、寒い部屋に彼女を連れ込もう、という作戦に出た。
こうすれば彼女も反省し、掃除をマメにするかもしれない、と思ったのだった。
ストーブを持ち上げると、一枚の写真が出てきたのだった。
「これ、海か。去年、おととしか?」
ぴったりと肌をくっつけあう二人の笑顔と太陽が同じくらい眩しい写真を手にしてしばらく立っていた。
はっと気がつくとすでに五分経過している。
彼は手にしている写真を「必要なものボックス」に入れ、掃除を再開することにしたのだった。
ストーブが消えて少しだけ部屋が広くなった。
これで掃除機が出せそうだった。
入居してから使われたことのないそれはコーティングされている証であるツヤを見せていて、彼の顔とは対照的であった。
「そういや、これアイツが買ってくれたんだよな」
掃除するから、と懇願されて渋々承諾した通販の掃除機。
結局、料金は彼が払い彼女が使うことなく部屋の片隅にて忘れ去られていたのだが。
今になってようやっと思い出したのだった。
コンセントを差し込み電源を入れてみると静かな吸音がして楽々とホコリを吸い取ってくれるのだった。
心地いい。
しかし、その心地よさで忘れるところだったことが一つだけ。
「…………あいつ、これの金……俺に払ってねえよなあ……」