「あれもこれも大掃除。」
この憤りまでは掃除機は吸い取っては紅様だった。
がむしゃらに隅々まで掃除機をかけていく。
コンパクトなそれはどこにでも入っていく便利な道具だと思えたのだった。
秘密の組織が開発した、と言われても信じてしまうかもしれない。
次に彼は厄介な窓ガラスを掃除することにした。
ヤニで汚れてしまっていて、どうしたらいいのか考えていると。重要な何かを思い出しそうな気がしていたのだった。
もう少しで思い出せそうなのに、思い出せない。そして。
「あいつのせいだ。ちくしょう、ありさのヤロウ…………」
そんなことをつい口走ってしまう。
世間では大掃除など終わってしまっている行事であろうだったので、正月の特別番組しかやっていない。
どれもこれもつまらないできで、退屈しのぎにもならない。
テレビをぼんやりと眺めていると十分が経過していた。
これでは日が暮れてしまう。
しかしやる気にもならなかったのでチャンネルを変えてみる。
映画をやっていて、銃創に弾丸を入れているのが見えた。そこで。
「あっ重曹か! アルカリパワーか!」
思い出したのはいいが、食用のそれしかなかった。
仕方なくそれを使ってはみるものの、落ちは悪い。
泣きたくなってきた彼は窓ガラスや壁紙を力一杯こすることで怒りを紛らわせていたのだった。
「あのチクショウが帰ってきたら許さねえ…………」