「あれもこれも大掃除。」

夕日が落ちていて、既に夜だ。しかし人はたくさんいる。

正月の一日だからだろう。

元旦だからだろう。

とりあえず彼女の「たっての希望」でタバコの吸える店に入ることにしたのだった。

「やす、飲み物!」

「醤油でも飲んでろ。そこにあるだろ」

「あー、そーゆーこと言うんだ。やす」

徒(いたずら)に笑う彼女を無視してドリンクバーに向かう。

彼女の苦手な甘いものをグラスに入れた。もちろん自分も同じものを入れたのだった。

「わたしこれ飲めない」

「ワガママじゃねえか!」

「何よミルクカプチーノって。カフェインゼロパーセントじゃないの」

「少しくらい入ってるだろ。カプチーノだし」

彼だって甘いものは飲めないのだが、我慢して飲み干す。

彼女は何度もブラックコーヒーを所望していたが、気にしないことにする。


そして、日付が変わった。

「二日になったね」

「ああ。仙台じゃ今日が初売りだな。行くか?」

「北海道もそうだよね」

「そうだったか?」

何気ない会話。

しかし、彼女はどこかおかしい。何かを隠している。

分かりやすいところは愛嬌が持てる。率直に聞いてみることにした。

「で、何を隠してる?」

「バレたかー。これ」

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