思い出になる前に





「あー変って言ったなー!」

先輩は笑って私の手を握った。

大きな手…

少しドキッとした。



「久美ちゃんの手小さいねー」

「先輩が大きいんですよ」

いつぶりかなあ。
男の人に触れるの。

男の人と笑って話すの。



「おーい俊也ー次移動だぞー」

教室から男子が出てきた。
舟木先輩は慌てて手を離した。



「突然ごめんね?じゃ俺行くね。また」

そう言って手をぶんぶん振って先輩は走って行った。




突然現れて、突然消えた。それは入学して2週間のことだった。






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