【短編】いらない人間のころし方【MENS企画】
「そんな、ありがとうなんて」
角を曲がり、歩道橋を登る。
欄干は錆び、夕日の赤に鈍く混ざり合う。
「ねぇ、白ちゃん」
「はい?」
「私もね。早くにお母さんを亡くしてるの」
「そう、なんですか」
「……私。頑張って、あなたのお母さんになるから」
赤光の中。七千は、優しい笑顔を私に向けた。
……何でこの人はそんなクソ恥ずかしい事を笑って言えるんだ。
あぁ。
そうかこの人はバカなんだ。
バカだからあんなバカな事を大真面目に言えるんだ。
ったく。
聞いてる私の方が恥ずかしくなるわ。
私は自分も夕日に染められてることを小さく願いながら家に向かう足を速めた。
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