【短編】いらない人間のころし方【MENS企画】
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部屋に満ちる『おでん』の香りは、否が応でも食欲を刺激する。
晩御飯の時間。時計の短針は7を僅かに越えた所を指している。
リビングには、中心におでん。それを挟み私と七千が座る。
お父さんはまだ仕事から帰ってこない。いつもなら既に帰って来てる時間だけど。
まぁ年の瀬だ。とどのつまりは繁忙期。忙殺されていても不思議じゃないけど。
「おでん、冷えちゃうね」
おでんは冷えても私達の関係は冷えないよ!!
温まりもしないけどね!!
うまいこと言ってみたつもりだったけど反応は無い。
何故なら声には出さなかったからね。ヒマな私の一人遊びだよ。
「先に食べちゃおうか?」
そう言って七千は私のお椀におでんを盛りつけ始める。
綺麗な飴色に染まった大根。滴る汁さえ惜しいイトコンニャク。肉厚なガンモ。
本当に美味しそう。