【短編】いらない人間のころし方【MENS企画】
瞬間、七千の笑顔が醜悪に歪む。
つり上がる口角、それとは反対につり下がる目尻。
全てを見越したような、下卑た笑みは。けれど私の心臓を跳ねさせるには十分過ぎる。
「白ちゃぁ~ん?もしかしてぇ、おでんに何か。入・れ・たぁ?」
例えば、睡眠薬。
ゾッとする程に冷えた声。
威嚇も挑発もない。ただ的確に私の心臓を掴みに掛かる、彼女のそれ。
「な、何を言ってるのか」
喉が渇く。次の言葉が出て来ない。
テーブルには、さっき七千が淹れてくれた一杯のお茶。
私はそれを喉を鳴らしながら一気に飲み干す。
言葉を出して、この窮地を脱する為に。
けれど思い浮かぶ『言葉』はあまりに苦しい。
それどころか七千の笑顔はより一層シワを深くする。
「…あ、れ?」