あーるぴーじー
そして、長老の家にやって来た。
「おじゃーしゃーす」
乗り気じゃないが扉を開けると、正面には座布団に座る長老が。
あれー…
長老の家、オレん家よりも生活感がねーぞ…
だって、長老と座布団の他に、窓二つと壁掛け一つしかない。
長老どうやって生きてんの!?
「おお、待っていたぞアール!さ、こちらに」
長老、髭なげー…
「で、何の用っすか?」
「そうじゃそうじゃ。アール、お前に魔王を倒す旅に出て───」
夢ん中でジーヤに聞いた話と全く同じことをベラベラと喋りだす長老。
「──であるからして──」
「長老、オレさ、まだ飯食っt」
「──の魔物は──」
「歯も磨いt」
「──の村を──」
ダメだこいつ。
オレの話を聞く気がまっったくねえ!!
「……オレ、旅に出たくねぇな」
「ゲフゴホガハァッ!!!」
!?
「ど、どうした長老!!」
「い、いやなんの…いつもの発作じゃおぼろろろろrrr」
「ぎゃああああああ!!オレの服が!!オレの服があああああ!!!」
長老のゲロまみれに!!!!
「ゴホガハ……し、心配かけて悪いのう、わ、わしは大丈夫じゃ」
「オレが大丈夫じゃねーんだよッ!!!ゲロまみれなんだよ!!!」
「フウ…とにかくわしは、残りの命が少ない。本当だったらわしが魔王を倒しに行きたかったんじゃが──」
悲しそうな顔をする長老。
「じゃあ行けよ」
「ここは若い者に村の命運を任せようと思ってな。それでは頼んだぞ、アール!」
「…んのジジイ…!!」
ゲロまみれになりながら睨んでも、全く反応しない。
「…行きたくねえ」
「ここは若い者に村の命運を任せようと思ってな。それでは頼んだぞ、アール!」
「ゲロまみれ」
「ここは若い者に村の命運を任せようと思ってな。それでは頼んだぞ、アール!」
………んの、クッソジジイイイ!!!!
百歩譲って旅立つのはまだいいとして、このゲロ!!
お前の体内から出たコレ!!
何とかしろよおおおお!!!!
ウチには風呂がねえんだぞ!!!
「着替えよこせよ!せめてクリーニング!!」
肩をつかみ揺するが、笑顔で
「ここは若い者に村の命運を任せようと思ってな。それでは頼んだぞ、アール!」
と言うだけ。
こ、こえぇ…!!
オレは諦めて長老の家を出た。
ゲロにまみれたまま。