王子様はご主人様!?


「やだっ……」



気づいたら、ジッと閉じていた瞳から涙が落ちていた


「やだよっ―…」


「花梨……」



ゆっくりと離された唇



「ごめん…ごめんなさい……」



何に謝っているのか自分でも分からなかったけど、ただこの場から逃げたかった


泣いて謝るあたしを、何も言わずに見ている輝




そんな状況にいたたまれなくて、生徒会室を出た



涙が流れないように、必死に脱ぐって走る


――ドンッ


「うわっ!」



前を見てなかったせいか、ぶつかってしまった


「す、すみません……」



でも今はそれよりも、泣き顔を隠したくて、相手の顔を見ずに謝った



「俺は大丈夫だけど……あんたこそ大丈夫?」



「大丈夫です……」



「でも、あんた泣いてんじゃん…」



「っ………」



誰かも分からない人に、そんなことを言われて恥ずかしくて、頬が熱くなるのを感じた




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