王子様はご主人様!?


――ガチャ


そっと玄関のドアを開け、周りに誰も居ないか確認する


よし…今なら大丈夫だよね……


すぐさま靴を脱ぎ捨て、洗面所に走った


「あら?花梨、やっと帰ってきたの!?」


そう呼ぶお母さんの声が聞こえたけど、それさえ無視して走った


だって…こんな姿見せられないもん……



洗面所で着ていた服を全て脱いだ


これはもう着たくない……


ボタンが何個も外れ、見るも無惨な制服


代わりの制服合ったよね…?



ふと何気なく鏡を見た


「っ!!」



そして写し出された自分の姿に息を飲んだ


な、何よ……これっ……



必死に首元にある“それ”を消そうと、手で擦る


強く擦り過ぎたせいで、そこが真っ赤になる



「っ…ウゥ―……」



嫌だ……


忘れたいのに……


思い出したくもないのに……



そこに残っている“痕”は紛れもなく、さっきの悪夢を思い出させた



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