学園スパイラル~夢と希望と正義とバカと~
ただ相手に報復するためならば、こんなことは必要ない。ましてや、手作りなんてあり得ない。
匠がただ楽しんでやっているとは思えなかった。四人分の弁当を作るのだって大変なはずだ。
隼人は、ゆっくりとクッキーを取り出して口に含む。強い甘みでは無かったが、シナモンが微かに鼻に通って口の中に広がった。
ああ。こんな風にのんびりしたのは、いつ振りだろうか。気がつけば、いつもギスギスして周りに敵意ばかりを向けていた。
見ず知らずの大勢の人間に追いかけ回されて毒気を抜かれた気分だ。
「俺。なんのために東京に来たんだろう」
それなりに夢を持っていたと思う。華やかなイメージのこの街に憧れていたんだ。