winter game
「ねぇ茜!!
先生のとこに進路希望調査、
出しに行こうよ!!!!」
美紀が昼休みに調査票片手に
誘ってきた。
「…ごめん、今日持ってくるの
忘れたんだ~!!」
あたしは数学の宿題をやりながら言った。
「提出明日までだよ?
時和多行くって決めたんなら、
もっときっちりしなくちゃ?」
「うん!! そうだよね!!!」
あたしの苦笑いに美紀は
気付いているだろうか。
「じゃぁ、あたしは行って来るね!!」
そう言って、美紀は教室を出て行った。
廊下を見ると、栗田くんがいた。
「西脇さん!!」
あたしは複雑な思いで廊下へ出た。
「西脇さん、時和多高校行くの?」
あたしの顔が強張った。
「うん…受かるかわかんないけど、
第一志望なんだ」
「…ふぅん、そっか、凄いね!!」
栗田くんが、何か言おうとしたが、
それをやめた。
"栗田君はどこの高校いくの?"
そう、聞けばいいのに。
何で聞けないんだろう。
「時和多って難関だよね?
やっぱ西脇さんって頭いいんだ??」
「…そうかな?」
「そうだよ? 行きたいって
思うくらいなんだし!!」
栗田君の笑顔が歯がゆかった。
キーンコーンカーンコーン…
今日もまた、栗田くんに
志望校を聞けないまま終わって行く。