ビターな彼に夢中[短編]
翌朝の通学路
高宮はいつものように
私の前に現れた。


私の心臓は少しどきりと跳ねた。


いやいやいや…

ドキリって何よ?


『何?意識しちゃってんの?』


高宮は私を見てにやりと笑った。


『いやいや、意識してないから。』


なるべく冷静に返す。

私、意識なんかしてないから。


『ふ…出たツンデレ。』


高宮は笑う。

私は恥ずかしくなった。

『だから違うし!
高宮のこと好きじゃないし!』


なんで高宮はいつもそんな余裕な訳?


『嘘だね。』


高宮の余裕さになんだか腹がたつ。


思わず私は高宮に手をあげた。


でも逆に私の手首は
高宮に捕まれてしまった。


『ちょっ…セクハラっ
離してよ!』


『暴力反対』


『うるさいっ。高宮のくせに』


私がジタバタしても、
捕まれた腕はびくともしなかった。


高宮が私を見て言った。


『お前なんか俺が本気だしたら
どうとでも出来んだよ。』


そのままグイッと高宮に引き寄せられた。


『わっ…』


高宮はそのまま私を抱き締めた。


強引に引き寄せた癖に
抱き締める腕は優しかった。



『ちょっ…通学路だから…!』


『誰もいねーよ。』



そうだけど!

そうだけど!



ふいに
高宮の腕から解放された。



『た…高宮?』



高宮は何も言わずに一人で歩き出した。



な…

なによ…?



高宮は振り返って一言だけ言った。



『遅刻すんぞ。』



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