ビターな彼に夢中[短編]
『……』


お兄ちゃんは何も言わずに、
私を部屋に入れた。


そのままお兄ちゃんも部屋に入って、静かに部屋の扉を閉めた。


お兄ちゃんはステレオに向かい
私の部屋のCDを流した。


『座って?』


お兄ちゃんは振り返ってそう言った。


私は頷いてベッドに腰かけた。


お兄ちゃんは
私に向かい合う位置に、
学習机の椅子に背もたれを抱くように座った。


そのままお兄ちゃんは背もたれに額をつけて俯いてしまった。



…お兄ちゃん…?


お兄ちゃんは小さな息を漏らしてから静かに言った。


『…実は、お前の気持ちはずっと前から気付いてたんだ。』



『……え?』



『多分、俺の自惚れじゃないと思うんだけど…?』


お兄ちゃんは顔を上げた。

目が合った。


『…あ…』


ど…どうしよう…


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