ビターな彼に夢中[短編]
困惑する私に、お兄ちゃんは少し顔を緩めた。


『気持ち知ってて、ずっとお前が嫌なことしてごめんな。』


『……』


お兄ちゃん…


お兄ちゃんはまた大きなため息をついた。


『お前のことと家族のこと、全部大事にしたいから、これ以上一緒にいるのが辛いんだ…』


『…お兄ちゃん…』


『ごめんな。』


お兄ちゃん…


謝るのは私だょ…


私の気持ちのせいで
お兄ちゃんは苦しかったんだ…


お兄ちゃんは椅子から立ち上がろうとした。


私はお兄ちゃんの腕をつかんだ。


『…お兄ちゃん…
ごめんなさぃ…私もう、気持ち諦めるから…』


言いながら涙が溢れる。
声が震えた。


『…だから出てくなんて言わないで…』



置いてかないで…

傍にいて…

お兄ちゃん…



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